パパっと作れるヘルシーおやつ50選【クリーンイーティングOK】

フィチン酸って何?玄米はフィチン酸を含むから体に悪い?

玄米などの穀物、豆類、ナッツ類などは、健康にいいことで有名ですよね?

しかし、これらの食品には「フィチン酸」という、不思議な物質が含まれていて、なんと「体に悪いのでは!?」という噂もあります。

そこで今日は、フィチン酸の正体を紐解いていきたいと思います!

私にとって、フィチン酸はちょっと懐かしい存在です。

その昔、雑穀とナッツにハマっていた頃があり、その時は毎日フィチン酸との戦いに必死でした(笑)。

Contents

フィチン酸とは

穀物
Photo by FOODISM360 on Unsplash

フィチン酸(イノシトール6リン酸・IP6)とは、主に植物の種に含まれている物質で、種子における最も多いリンの貯蔵形態体です。

リンとは、人間の体にも、カルシウムの次に多く含まれているミネラルです。

種子が発芽するとフィチン酸は分解し、リンが放出され、放出されたリンは新芽の成長のために使われます。

自然界には、「人間にとってよい面と悪い面を両方持ち合わせている物質」がたくさんありますが、フィチン酸はまさにその代表的な存在です。

フィチン酸が体に悪い理由

それではまず、フィチン酸を含む食品が「体によくないのでは?」と噂される理由を見ていきましょう。

ミネラルの吸収を妨げる

実は、フィチン酸には「キレート作用」という、金属イオンを強く吸着する、とても興味深い性質があります。

この性質により、体内に入ると、鉄分、亜鉛、カルシウム、マグネシウムなどのミネラル分とくっつき、吸収の妨げになってしまうことがあるのです。

つまり、フィチン酸は「アンチニュートリエント」の1種です。

ただし、フィチン酸によるミネラルの欠乏は、先進国ではまずありえませんので、ご安心ください。

今までにフィチン酸による亜鉛の欠乏などが見られたのは、発展途上国で「食事のミネラル分が少ない上、フィチン酸を豊富に含む未精製・未発酵の穀物が主な食糧であった場合」のみです。

日本では、よほど極端に偏った食事をしていない限り、心配はありません。

貧血になるの?

フィチン酸は鉄分の吸収を妨げることから、貧血が心配になる人もいるかもしれません。

しかし、こちらも、バランスの取れた食事さえしていれば、よっぽどのことがない限りは大丈夫です。

ただ、深刻な貧血の人や血液検査などで亜鉛の欠乏などが分かっている人は、ミネラルの豊富な献立を心がけると、より安心できるかもしれません。

フィチン酸が体にいい理由

フィチン酸は、サプリメントとしても売られているぐらいですから、もちろん体にいい面もあります。

そもそも、フィチン酸は抗酸化物質で、防腐剤として使われることがあるくらい抗酸化力の高さで知られています。

尿路結石(腎結石)予防

96,245人の女性を8年間追いかけた研究では、フィチンの摂取が最も多かった女性(上位20%)は、摂取が最も少なかった女性(下位20%)に比べ、尿路結石になる確率が37%減少したということです(1)。

がん予防

米ぬかに含まれるフィチン酸の大腸がん予防のメカニズムを調べた研究では、米ぬかのフィチン酸ががん細胞の死滅を誘発したとし、「米ぬかなどのフィチン酸が大腸がんの予防や治療に役立つであろう」と結論付けています(2)。

また、食物繊維とがん予防について25の研究を分析したレビューでは、食物繊維の中でも特に全粒穀物の繊維が、「大腸がんリスク低下との結びつきが強い」としています(3)。

これは、全粒穀物に含まれるフィチン酸の効果もあるのではないかと言われています。

そのほかにも、フィチン酸は、乳がん、白血病、喉頭がん、子宮けいがん、前立腺がん、すい臓がん、皮膚がんなどにも効果があるのではないかと言われています(4)。

そのほか

尿路結石予防とがん予防のように情報は多くはないですが、フィチン酸には以下のような効果も望めるのではないかと言われています。

  • 体内の消炎作用
  • 有害重金属のデトックス作用
  • 骨密度の上昇
  • 糖尿病予防
  • 心血管疾患予防

フィチン酸のキレーション作用は、鉄分や亜鉛だけでなく、体に有害なカドミウムや鉛などの重金属まで吸着してくれるのは、とても興味深いですね。

フィチン酸を多く含む食品

米
Photo by Shalitha Dissanayaka on Unsplash

フィチン酸は、主に穀物、豆果、ナッツなどに含まれますが、含有量のデータには数値に幅があります。

下記の表は、2009年に発表された研究(5)をもとに、作成しました。

食品100g(乾燥)に含まれる、フィチン酸の量です。

食品名含有量(g/100 g)
トウモロコシ胚芽6.39
小麦ふすま2.1–7.3
小麦胚芽1.14–3.91
米ぬか2.56–8.7
大麦0.38–1.16
ソルガム0.57–3.35
エンバク(オーツ)0.42–1.16
ライ麦0.54–1.46
雑穀0.18–1.67
インゲン豆0.61–2.38
エンドウ豆0.22–1.22
ひよこ豆0.28–1.60
レンズ豆0.27–1.51
大豆1.0–2.22
フラックスシード2.15–3.69
ごま1.44–5.36
ヒマワリの種3.9–4.3
ピーナッツ0.17–4.47
アーモンド0.35–9.42
くるみ0.20–6.69
カシューナッツ0.19–4.98

フィチン酸には、摂取上限の目安などはありませんし、そもそも、ほとんどの人にとって、正確な摂取量を気にするほどの存在ではありません(フィチン酸には悪いですが)。

米ぬかの数値は確かに高いですが、米ぬかの量は玄米の重量の10%ほどですので、玄米として食べる場合には、気になるような数値でもないと思います。

ただ、最近は米ぬかそのものをふりかけのようにして食べる人や、玄米過多の食事をする人が出てきたため、玄米に含まれるフィチン酸を心配する声が増えたのだと考えられます。

フィチン酸を取り除く方法

ミネラルをたっぷり含むバランスの取れた食事さえしていれば、フィチン酸によるミネラル欠乏に陥ることはありません。

しかし、やはりフィチン酸の「ミネラルの吸収妨害効果」が気になるという人もいると思います。

フィチン酸は、以下に紹介する3つの方法で、減らすことが出来ます。

  • 浸水する(ソーキング)
  • 発芽させる
  • 発酵する

浸水する(ソーキング)

以下の水温とpHの組み合わせで乾燥豆を浸水(一定の時間水に漬ける)し、フィチン酸の減少率を調べた実験があります(6)。

  • 水温:21°C/37°C/55°C
  • pH: 4.0/6.0/6.4/7.0/8.0

その結果、一番フィチン酸除去に効果があったのは、水温55℃でpH 7.0の水で浸水する方法でした。

この状況下で、4、8、17時間浸水した場合のフィチン酸減少率は、それぞれ79%、87%、 98%だったということです。

pH7.0は中性ですが、厚生労働省によれば、水道水のpHは5.8以上8.6以下と定められています。

また、ミネラルウォーターも、よくスーパーで目にするメーカーのものはpH7.0~8.0ぐらいのものが多いです。

ただし、温度に関しては、水温55℃をキープしたままの浸水は、なかなか家庭では難しいですよね。

ですので、現実的には食品の種類にもよりますが、「室温で一晩浸水」が目安になるのではないかと思います。

キッチンが寒い場合は、できるだけ暖かい場所に置くといいかもしれません。

「水広場」というサイトに、ミネラルウォーターのpH値の目安が分かるページがありました!

気になる方は、参考にされるといいかもしれません。

発芽させる

フィチン酸は種子が発芽する際に分解され、リンに変わります。

このため、発芽は余分なフィチン酸を食品から取り除くのに、有効的な手段だと考えられます。

小豆を発芽させた実験では、フィチン酸(IP6)が55%減少したという結果も出ているぐらいです(7)。

発芽玄米が「より健康にいい」と言われるのには、こういう理由もあるんですよね。

発酵させる

酵素玄米
Photo by Charles Koh on Unsplash

発酵は、フィチン酸を取り除くのにとても効果的だと言われています。

浸水後の乾燥豆を48時間発酵させて、フィチン酸が88%も減少したという実験結果もあるぐらいです(6)。

1960年代に中東で亜鉛欠乏症の問題が起こった時、フィチン酸の存在も注目されました。

この時、亜鉛欠乏が広まる村で食べられていた未発酵のフラットブレッドには、都市部で食べられていた発酵して作るフラットブレッドの倍以上のフィチン酸が含まれていることが明らかになりました(8)。

食品によっては「どうやって発酵するか」で悩むものもあると思いますが、玄米の場合は、酵素玄米・寝かせ玄米が普通の炊飯器でも作れるので、分かりやすくていいですよね!

ちなみに、イースト発酵よりは、乳酸発酵の方が効果が高いらしいです。

加熱は?

加熱調理は、ほとんどのアンチニュートリエントを取り除くのに有効ですが、フィチン酸に限っては、あまり効果がないと言われています。

玄米や小麦の全粒粉を加熱せず食べる人はいないと思いますが、逆に、必要以上に加熱しても意味はないということです。

普通に好みの硬さまになるまで加熱すればOK!

まとめ

私も雑穀をたくさん食べていた時は、やはりフィチン酸などのアンチニュートリエントが気になっていましたので、毎日せっせとキヌアやアーモンドを発芽させていました。

「浸水、発芽、発酵」は、フィチン酸除去効果が証明されていますので、すこし手間はかかりますが、試す価値は絶対あると思いますよ!

食品自体も消化もしやすくなりますので、おすすめです^^

参照

  1. Curhan GC, Willett WC, Knight EL, Stampfer MJ. Dietary Factors and the Risk of Incident Kidney Stones in Younger Women: Nurses’ Health Study II. Arch Intern Med. 2004;164(8):885–891. doi:10.1001/archinte.164.8.885
  2. Shafie, N. H., Esa, N. M., Ithnin, H., Saad, N., & Pandurangan, A. K. (2013). Pro-apoptotic effect of rice bran inositol hexaphosphate (IP6) on HT-29 colorectal cancer cells. International journal of molecular sciences, 14(12), 23545–23558. https://doi.org/10.3390/ijms141223545
  3. Aune, Dagfinn et al. “Dietary fibre, whole grains, and risk of colorectal cancer: systematic review and dose-response meta-analysis of prospective studies.” BMJ (Clinical research ed.) vol. 343 d6617. 10 Nov. 2011, doi:10.1136/bmj.d6617
  4. Nutrition Facts: How Phytates Fight Cancer Cells by By Michael Greger M.D. FACLM
  5. Ulrich Schlemme, Wenche Frølich, Rafel M. Prieto, Felix Grases, Phytate in foods and significance for humans: Food sources, intake, processing, bioavailability, protective role and analysis, Molecular Nutrition, Volume53, IssueS2, Supplement: Selected Bioactive Plant Compounds in Human Nutrition, September 2009, Pages S330-S375. https://doi.org/10.1002/mnfr.200900099
  6. E‐L. GUSTAFSSON, A‐S. SANDBERG, Phytate Reduction in Brown Beans (Phaseolus vulgaris L.), Journal of Food Science, Volume60, Issue1, January 1995, Pages 149-152. https://doi.org/10.1111/j.1365-2621.1995.tb05626.x
  7. Luo, Y., Xie, W. and Luo, F. (2012), Effect of Several Germination Treatments on Phosphatases Activities and Degradation of Phytate in Faba Bean (Vicia faba L.) and Azuki Bean (Vigna angularis L.). Journal of Food Science, 77: C1023-C1029. doi:10.1111/j.1750-3841.2012.02733.x
  8. Rosalind S. Gibson, A Historical Review of Progress in the Assessment of Dietary Zinc Intake as an Indicator of Population Zinc Status, Advances in Nutrition, Volume 3, Issue 6, November 2012, Pages 772–782, https://doi.org/10.3945/an.112.002287
【免責事項】
Loving Natural Healthのブログ記事は情報を提供するものであり、医師のアドバイスの代わりになるものではありません。何があなたの健康にとって最善かについて尋ねたい場合は、有資格の専門家(医師、管理栄養士、薬剤師など)に相談することをお勧めします。文書内で言及している個別の商品について、その品質や効果、安全性を保証しているものではありません。